大学時代:トンカツ屋
大学からアパートへ帰る道筋は幾つかあったけれど、その一つの道にトンカツ屋があった。
そんなに入る気も無かったけれど、"とんかつDJアゲ太郎"というマンガをジャンプ+で読んでいたら無性にトンカツを食いたくなり、ネットで調べて評判好さげなそこに辿り着いた。
ただ、初めて入った時は、味わうよりも強烈な記憶があった。
初めて入った時、それは一人で行った時だった。そして、その店にはファミリー席しか無かった。
ファミリー席で、一人で食べる虚しさというか悲しさというか疎外感というか。学食でも似たような事をした事があったけれど、やっぱりすぐにでも食い終えて出て行きたいという思いで一杯だった。
それでも出来るだけ味わったんだけれど。
トンカツは下駄の皿に乗せられて出て来る。
量は、最初はこの位でこの値段かぁ、って思う位だったけど、食い終えてみれば満足するボリューム。
味も全く不満は無かった。
そのトンカツ屋に行くやや前に、父親と親戚との計四人でプチ旅行しに行った時にSAでトンカツを食べたけれど、そんな所のトンカツとは全くの別物だった。
揚げたての衣はサクサクカリカリで、中もジューシー。それがちゃんとしてるトンカツ。
値段は、学生にしてはやや高いけれど。
そこには合計三回行った。
自分一人のみで、それから同じ研究室の友達、先輩とで。
最後に行った時、同じ研究室の友達がそこで梅トンカツなるものを頼んでいて、自分の普通のトンカツと一切れ交換して貰った。
その友達曰く、ここではこれしか食った事が無いと言っていたけれど、それも納得する味だった。
ミルフィーユのトンカツに、梅肉が挟まっている。
それがさっぱりしていて、トンカツの油っこさをしっかり打ち消してくれる。
これなら沢山食べられそうだ、って思うけど、まあ、値段に差はあれ量は同じ。
次来た時はこれを頼もうと思っていたけれど、もうそれ以降は行かなかった。
大学は務める場所からはかなり遠いし、行くような機会も余り無いだろう。ちょっと名残惜しい。
大学三年の夏から、大学四年の冬までの、ちょっとした思い出。